備忘録

夢とか白昼夢とかのメモを薄くしたり濃くしたりしたやつだよ。カルピスと一緒だね。

恐怖の箱のことなど

・「ぼくの恐怖を見せてあげる」と少年に玉手箱を渡されるが、開けると空っぽで、「どうして見えないんだろうね?」と詰られる

  幼稚園か小学校低学年くらいの子どもであったが、人の年齢を当てるのが苦手なので自信がない。

  他人の恐怖なんか見せてもらわずとも自分の恐怖で十分足りているのだが、興味はある。しかし玉手箱というのは怪しい、こういうのを開けると舌を切られたり歳をとったりするのではなかったか?

  お化けが怖いだのスプラッタがダメだの、あるいは預金通帳を見るとゾッとするだのという怖さの対象よりも、興味があるのは、そういう恐怖と結びつく個人的な体験である。犬に噛まれたから犬が怖い、というのがこれに当たる。

  お化け屋敷に行くと驚かされるが、それが恐怖なのかわからない。一度本当に恐怖を感じたのは、自衛隊か何かのお化け屋敷で、橋のたもとで首を落とした人が「拾ってくれ」というものだ。幼い私は腰を抜かすくらい恐ろしかったが、親は拾って手渡した。受け取った男は首をすばぶった(家人の言葉。博多弁で「吸う」の意味らしいが、この「すばぶる」と「生首」はセットになって今でも私の恐怖を喚起する)。

  このとき、実は親も大変怖かったらしいが、それをおくびにも出さなかった。怖いのが顔に出ない人もいるんだなあ、と子ども心に感心した憶えがある。

  心底怖いものは、人に訊いても素直に答えてもらえるかわからない。私自身がいま怖いものは、あまりそれが怖いことを言えるものではなく、それを目の前にしてもすこぶる平穏な表情をしていられる。

 

  ・マフィアのエラい人にリモンチェッロを渡す

  ドンに会うため列に並んだ。美味しい銘柄があり、それをどこで手に入れたか教える代わりに、何かしてもらう魂胆のようだった。「他に気づいたことは、後でお伝えします」とも言った。お前が気づくようなことは彼も気づくのではと思う。