備忘録

夢とか白昼夢とかのメモを薄くしたり濃くしたりしたやつだよ。カルピスと一緒だね。

宇宙の干渉

突然、立っていられないほどのGがかかり、それがなくなると今度はエレベーターが降下するときのような、鳩尾にくる浮遊感があった。

窓の外が暗くなっていて、遠くに地球が見える。ここは宇宙船の内部で、たった今、地上から宙へ噴射されたのだ。「地球は青かった」という言葉があるが、思っていたより黄味がかった色で、見ようによっては灰色とも言える。

少しすると重力を調整したのか、碁盤状に模様の入った床に足を下ろすことができた。入り口のパネルには擬似的な乱数が表示され、拍動とおよそ同じスピードで切り替わっている。ここから入ってきた記憶はなかったので、たぶんUFOの絵でよく見るように、床が開くようになっているのだろうなと思った。

乗組員は数名いて、全員が宇宙的な力によるなんらかの「干渉」を受けていた。私への干渉は「ランダムに時空間へ排出すること」だ。船内にいたと思ったら次の瞬間には地上の……これが本当に私の地球なのか、判別できなかったが……どこかに出没して、そこで「いままでここにいたかのように」振る舞わねばならない。私が現れたのが、バレてはならないらしい。

コミュニケーション上の問題は私の与り知らぬ技術によってクリア済みだったが(翻訳コンニャク的なものを服用していたのであろう)、その場の空気や文脈を読んで整合性を保つのは困難である。誰かは私がいることを不審に思ったはずだ。そのとき「神出鬼没」の言葉ができたのではないかと思った。

一度のジャンプですっかり体力を消耗する。膝をついて喘いでいると、周りの人間も同じ状態であることに気づいた。透過性が高いパネルでブースのように仕切られているので、その影は幽霊を鏡の間に写したように見えた。一瞬、全て自分の鏡像でないかと思ったくらいだ。

ようやく、この宇宙船がどこかへ向かうわけではないと気づく。つまり地上では危険な実験なので、安全面からこの場所が選ばれたのだ。