備忘録

夢とか白昼夢とかのメモを薄くしたり濃くしたりしたやつだよ。カルピスと一緒だね。

カンバラさんのことなど

・カンバラさんを探している。写真によると30代になろうかというエンジニアの女性で、黒い髪を高い位置で括り、黒縁のメガネをかけているはずだった。地下1階の手工業工場にはいない。ヘッドセットからオペレータの指示が出るので、それに従って地下2階へ降りる。当然だが上の工場によく似た作りで、しかし作業台に乗せられているのはたくさんの乳幼児だった。

工場は面白い。何を作っているのか、仕組みも何もわからなくたって、ワクワクするというものだ。ずいぶん前に精密機械だかの工場へ見学に行ったが、油圧で部品を磨いているのや、たくさんの機械が一心に動いているのを見るのはなかなか壮観であった。

人間も一心に働いていると機械のようで面白い。没入状態ははたからは忘我のように見え、動いていても魂はここにないのだな、と思う。動いている機械の類も、我々が見ているその間だけは魂がないだけで、物置にしまわれているときなんかは色々なことを思うに違いない。

 

・死んだフリをして消えてしまった男から連絡が入り、最新の情報を得る。「私か? 私は、今は遺体安置所にいるよ」と言って通信を切られた。傍受を予想した暗号なのだろう、おそらく「モルグ」に何か意味があるのだな、と考えた。同時に、男の声の後ろに汽笛が聞こえたようでもあり、もう出航したのか、とも思った。

醒めてから調べてみたが、モルグには「資料室」という意味もあるらしい。偶然にしてはよくできているので、どこかで得た知識を脳みそが思い出してくれたのだろう。私が何も憶えてなくても私の脳はこうして勝手に記憶しておいてくれる。便利なことである。

昔、千葉だか東京だかから九州まで船で行ったことがある。船旅は楽しかったが、海風よりも夕陽よりも記憶に残ったのは、食品の自動販売機だ。おにぎりやたこ焼きが売っていて、これがクセのある匂いで辟易した。今でも似た匂いを嗅ぐと、一瞬で船を思い出す。