備忘録

夢とか白昼夢とかのメモを薄くしたり濃くしたりしたやつだよ。カルピスと一緒だね。

玉依姫

(経緯。ある人に会うための旅に、用心棒として、武術・呪術に長けた女をあてがわれる。教会のような場所で町を紹介され、城を訪ね、追い出される。) ……城郭が揺れた。と、いくつも首を持つ巨大な金竜が姿を現わす。耳を聾す咆哮と地鳴りは雷のよう。三つ首ま…

ブルーのことなど

・「私の目は誤魔化せん。持っていくブルーがすぐに無くなると信じていた」 「ブルー」は試薬で、私はそれを持ち出したと疑われているらしかった。 夜店で売っているかき氷は薬っぽい味で、そこも含めて好きだ。どう考えても体に悪そうな色をしているので、…

埴輪

鄙びたバス停で降りた先の小さな書店。 その店のレジを左に見て右側は、接ぎ木したように体育館になっている。性齢関係なしに色々な人がいた。奥の舞台のそのまた奥の壁は木の板で、その辺りにだけ、異様な緊張が満ちていた。今にも、その板が割れて、中に充…

カンバラさんのことなど

・カンバラさんを探している。写真によると30代になろうかというエンジニアの女性で、黒い髪を高い位置で括り、黒縁のメガネをかけているはずだった。地下1階の手工業工場にはいない。ヘッドセットからオペレータの指示が出るので、それに従って地下2階へ降…

鬼子

それぞれ水色とピンクのワンピースを着た双子の少女が、私を見て笑っている。 言い知れない危険を感じて、慌てて玄関から外に出てドアを閉めたが、振り返るとそこにも双子の少女がいた。重い胎を抱えながら、精一杯の速さで屋根の付いた屋上に出る。双子は白…

換気扇と蛙のことなど

・4m四方ほどの白い小部屋。家具はない。正面奥の壁に換気扇が付いているほか、窓もなかった。 換気扇の中には両手で持つほどの大きさの、茶色の蛙が入っていて、私が覗き込んでも微動だにしない。見ていてなんだか嫌な気持ちになったが、換気扇に対してなの…

鳥の囀り

鳥の鳴き交わす声が聞こえている。 邸宅の最奥は和室で、着物の袖をたくし上げ、畳に置いた洗面器に顔を入れた。水が張られているので息が苦しい。口を開けねばならず、口腔から唾液が流れ落ち、水と混じった。 隣には人が仰臥しており、微動だにしないので…

宇宙の干渉

突然、立っていられないほどのGがかかり、それがなくなると今度はエレベーターが降下するときのような、鳩尾にくる浮遊感があった。 窓の外が暗くなっていて、遠くに地球が見える。ここは宇宙船の内部で、たった今、地上から宙へ噴射されたのだ。「地球は青…

ナツメのことなど

・銃で後頭部を撃ち抜いて「ナツメには何もないのか」と尋ねる ナツメって誰だ、というか何だ……と思ったがそれを訊く機会はなかった。それにしても撃ち抜かれた人はなんだったのだろう、この人に訊くのが1番有意義だったと思われる。激昂すると的確な判断力…

火を焚く男

深夜、新宿南口への高架下を歩いていると、女子大生2人が警官と言い争っていた。通り魔に遭ったのですぐ捕まえてほしい、という彼女らに、警官は取り合う気がないらしい。私は道路の反対側を歩いていたので目につかないようだったが、なるべく見つからない方…

モモンガと少年のことなど

・紙袋にモモンガの死骸を入れて持っていた少年が、そのことを指摘されて袋を覗き込み、「生きていたんだ、生きていたんだね」と泣く 中身を見せてもらえなかったのだが、本当に死んでいたのだと思う。この少年は、死んでいることがバレたら取り上げられると…

鯨と海上古代都市

またしても追われている。これも仕事の一環なのかもしれない。 長い髪を帽子に隠して変装した少女と、都内の某私鉄ホームで待ち合わせていた。電車から飛行機に乗り換え、手首につけたPDAで他所にいる仲間とやり取りする。敵に見られてもいいよう、文面を工…

青い立方体のことなど

・男が青い小さな立方体の集合を抱えて正座する女を覗き込み、「どうしてこんなに怒らせることができたんだ?」と驚く 私が怒らせたので、それが立方体の青の輝度で判別できたらしかった。この立方体は模型のような、枠だけのもので、光ファイバーなのか電気…

ヒヨコ売り

これ以上駆けたら肺と心臓が喉から出てしまう、というくらいに、無我夢中で走っていた。 空は黄ばんだ灰色で、雨が降る前の夏の夕暮れなのだろう。辺りは異様に静かだった。大勢が息を潜めているような気配だけがあり、見張られているのが感ぜられた。 小学…

目がいい人のことなど

・視力が卓越しており、「物体が汗をかいているのが見える」人 本やカップも、よく見ると汗をかいているのだという。窓などの温度差による結露を「汗をかく」と表現するが、そうではなくて、物体も生き物のように代謝しているという話であった。 私は電話を…

刺された子

心臓のあたりを刺したのだろう。 薄暗い書斎である。微かな陽光が、宙の埃を光線のように見せていた。友人は少女と向かい合い、私は跪いて少女の後ろ姿を見ていた。友人の顔は逆光でよくわからない。 正面からなのでうまくいかなかったのか、すぐには死なず…

魚を叩きたくないおじさんのことなど

・「天は大魚を叩くなり」と言って大魚を叩くよう言われたおじさんが、それは嫌だと泣きながら拒否する おじさんに命令しているのは漢詩の挿絵に入っている仙人のような人であった。おじさんは魚を可愛がっていたので、殺したくなかったらしい。叩くというの…

蛇口から顔

幼稚園から小学校にかけて、風変わりな老人のアトリエで、絵を習っていたことがある。習ったといっても技術を教えてくれるわけではなく、週に一度アトリエに行っては、好きな絵を描いて帰ってくるのだった。生徒たちも、絵というよりは脳味噌のような迷路ば…

空を飛ぶのと同じことの話

放置していた携帯電話を充電すると、不在着信が入っていた。しばらく疎遠になっていた友人からであった。 折り返しの電話をかけると、今度は相手が出ない。留守電に残すほどではないと思って一度切ったが、しばらくするとやはり気になり、結局メールした。着…

デスマスク体のことなど

・デスマスク体 ですます体のことかもしれない。 慣れの問題なのだろうが、ですます調は冗長に感じられるので苦手だ。しかし「苦手だ」も「苦手です」も大して字数は変わらないので、まあ印象の問題だろう。 翻訳物でこれにぶち当たると、であるだ調で別の訳…

追われる少女と蛙

何か取り返しのつかないことをしてしまったようだった。 追われる身として、目立つ方法は避けたかった。彼はトラックの荷台に隠れてどこかに行こうとするが、結局逃げられない気がして降り、そこから徒歩で最寄りの駅に向かう。当日の乗車券をぎりぎりのとこ…

人を食べる紳士のことなど

・「犬を食べるんですか?大丈夫です、私は人間を」と紳士にフォローされる 私が犬を食べると言ったらしく、それに「自分は人間を食べるから犬くらい気にすることはない」と言ってくれたようだ。 犬を食べたことはないが、食べてみたいとは思う。猫も食べて…

茅の輪くぐり

何の研究施設だろうか。要塞のように大きく、ブリューゲルのバベルの塔を下部だけにして、白くしたような建物だった。辺りにはこれのほか何もなく、一面は盆地のように少し傾斜のついた草原だった。空気の感じから、標高が高いのだなと思った。寒かったのだ…

無限に反射する虹のことなど

・虹が出ていたのでヘリコプターに乗って水を撒くと、霧の鏡に虹が映り、遠くの地平に向かって合わせ鏡のように無限に反射される ファンタジックな白昼夢である。ところで空の高いところでは丸い虹が見られるらしい。これはブロッケン現象によるもので、光輪…

脳味噌露出男

階段を上がって部屋に入ると、老婦人とはぐれたことに気がついた。 慌てて踵を返し、玄関あたりで、人が倒れているのを見つけた。笑顔のマークを落書きをされた段ボール箱を被せられている。恰幅良いスーツ姿なので老婦人ではないのだが、一応誰なのか確認す…

蟻の巣のことなど

・「お墓が知っている」と言いながら蟻の巣を見ている少年 たぶん幼稚園児くらいだと思う。蟻の巣を見ている理由も聞いたと思うが忘れた。 小学生の頃、福音館の『自由研究図鑑』を買ってもらってから、夏休みだけではなくこの本をよく使った。『野鳥図鑑』…

餃子

近所に住んでいる学生たちが餃子を食べに来たので、餃子パーティを開くことになった。面識もないのになぜそんなことになったのか、見当がつかないが、おそらく私の知らないうちに決まったのだろう。 といっても餃子を作るのは私一人なので、十数人分の食材を…

落ちてくるもの

遠く高層建築物の外階段から、大きな鳥のように、落ちてくる影がある。何か不吉な予感がして、慌てて屋内に駆け込んだ。 午後の陽光が差し込む廊下は、長く、何故だか大学の頃を思い出した。両側にある一つ一つの部屋は独房のようで、それぞれにスピーカーが…

オオカミウオのことなど

・オオカミウオは、上半身が狼で下半身が魚 人魚は上が人で下が魚、魚人はその逆なので、ルールには則っている。この法則でいけば、山田さんは上体が山で下部が田んぼだ。村松さんは体を4分割し、右手パーツが木、心臓側が寸、右脚あたりが木、左脚は公とい…

夢を見せる人

夢を見せる人がいるという。 木の床、暖色に塗り上げた壁、天井は生形の布で覆われたホールで歓談していると、知人がやってきた。色とりどりのセロハンのような軽くて柔らかいガラス、光る糸の束で、さながらカーニバル衣装である。 バンドウさんに頼むと、…