備忘録

夢とか白昼夢とかのメモを薄くしたり濃くしたりしたやつだよ。カルピスと一緒だね。

鬼子

それぞれ水色とピンクのワンピースを着た双子の少女が、私を見て笑っている。

言い知れない危険を感じて、慌てて玄関から外に出てドアを閉めたが、振り返るとそこにも双子の少女がいた。重い胎を抱えながら、精一杯の速さで屋根の付いた屋上に出る。双子は白い歯を見せる笑顔のままで、普通の歩調、しかし遅れることなく近づいてくる。逡巡したものの、これしかない、と思い少女らを突き飛ばした。二人は手摺の外に落ち、下を覗くと、水色とピンクのワンピースが遠ざかっていくのが見えた。

罪悪感と安堵から大きく息を吐く。と、背中に強い衝撃を感じた。見下ろすと、膨らんだ胎から鋒が突き出ている。それがグッと上に持ち上がり、胸の悪くなるような音とともに身が裂ける。熱い血と臓物、赤黒い塊が、ビルの下に落下していった。

……私はドアを開けていた。家には誰もおらず、不安な直感が私に「屋上へ」と囁く。鍵も閉めずに飛び出し、階下へ駆け下りた。一階のエレベーターホールから向かおうとしたのだったが、途中で異様なものを見つけ、足を止めた。巨大な赤鬼の頭であった。

血や肉のような筋にまみれ、湯気が立っている。頭だけでも、その直径は優に私の背の1.5倍はあるかと思われた。何か言いたげに口を動かすが声が出ない。覗き込むと、喉には穴が開いておらず、口腔は窪んでいるだけだった。その醜怪に老いた顔を見ていて、なぜだかわからないが、これは私と妻の子だということがわかった。何かを言いたいのではなく、産声を上げているのだ、生まれたばかりであるために。

屋上へ出ると、その薄暗い庇の下から、妻が目を光らせてこちらを向いた。ああ、よかった、と言いながら駆け寄るとき、その腹が凹んでいることに気づいた。途端に踏み出した彼女の足がコンクリートにめり込んだ。プールのようになった柔らかいセメントに足をとられ、近づくことができないまま、目の前でゆっくりと沈んでいく。