備忘録

夢とか白昼夢とかのメモを薄くしたり濃くしたりしたやつだよ。カルピスと一緒だね。

埴輪

鄙びたバス停で降りた先の小さな書店。

その店のレジを左に見て右側は、接ぎ木したように体育館になっている。性齢関係なしに色々な人がいた。奥の舞台のそのまた奥の壁は木の板で、その辺りにだけ、異様な緊張が満ちていた。今にも、その板が割れて、中に充満した何かが雪崩れてきそうな気配が。

その中に私はいた。

壁の中は暗闇だが、足元が土と草むらなのは何故だかわかった。かなり高い位置、体育館の天井くらいのところまで土手のようになっていて、その縁にかじりついているのだった。目の前には無数の人がいて、私も含めて埴輪ほどの大きさである。誰もが、点描で白を打ったように微かに発光していた。もう限界だというところまで我慢して、どうしてこの、落ちたくないのに落ちる状況にいつも放り込まれるのだ、と思った。それから、たぶん体育館の壁にあたる足元のベニヤ板が割れ、耳を聾す崩落音、気絶、暗転。

気絶している間、虚無空間とでもいうべき場所にいた。意識だけで宇宙に浮いた気持ちになり、あの大勢の埴輪は壁の外に出れば人間の大きさになるのだから、目覚めたらきっと酷いことになっているのに違いない、目覚めないでいたい、みんな死んでいるだろうし、落下して押し潰されるのだから形もわからないだろう、と思った。目覚めてみると、その通りだった。

朝未だきの暗さに似て、体育館の中は月光の青さで微かに見渡すことができる。といっても室内であるし、電気もなく、何が光源になっているかわからない。一面が泥と死骸であった。腕の断面や鳩尾から裂けて零れた臓物が、その水気のために光をぬめぬめと照り返している。青い光が一種モノクロのような効果を果たしているからわからないだけで、泥ではなくこれも人間の一部だったかもしれない。

このような凄惨な光景を生まれて初めて見たので、呆然としてしまった。まだ私の上にも肉塊が積み重なっていたが、這い出す気になれなかった。